新しい風習『夏詣』を演出 思い出を温かく照らす八戸市出身の照明デザイナー

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青森 2025.07.01 20:06

皆さんは夏のこの時期に神社・仏閣を訪れる『夏詣』をご存じでしょうか。
特集は『夏詣』を光と空間を使って演出する県出身の照明デザイナーです。


夏の夜風に揺れる風鈴の参道に…。
地面を流れる天の川の光。
東京の浅草神社は毎年この時期「夏詣」の雰囲気に包まれます。
演出を手がけたのは空間と光を巧みに操る照明デザイナー、八戸市出身の長根寛さんです。

★照明デザイナー(八戸市出身) 長根寛さん
「できればあんまり目立たせたくないからこっちがいいんだけど」

正月の初詣のように夏のこの時期に神社・仏閣を訪れ、1年の前半を無事過ごせた感謝とこれからの平穏を祈る。
そんな新しい風習が「夏詣」です。
2014年に浅草神社で始まり、今では全国およそ600か所近くで行われるまでになりました。
しかし始まった当初は資金面での課題から存続の危機に直面していました。窮地を救うため声をかけられたのが長根さんでした。
八戸工業高校の機械科でデザインを学び東京の専門学校に進学、その後照明デザインの会社で空間作りの経験を積んで独立しました。
「夏詣」は自分の力を発揮する絶好のタイミングでした。

★照明デザイナー 長根寛さん
「実際は参道しか無くて照らすものがないんです」
「照らすものが無いんだったら、照らすものを持ってきて作ってしまえということで」
「山から真竹を伐採してきてもらって、植木職人さんに入ってもらって参道にその竹をしつらえて、それをライトアップすることで、夏詣の風景を創り出したんです」

茅で作られた大きな輪をくぐり汚れを祓う「茅の輪くぐり」。
そして七夕の雰囲気を感じさせる参道は幅広い世代に人気です。

★参拝客
「気持ちを整えるなという感じがしてよかったです 思ったら半年経ったんだというのも感じてすごく良かったです」
「雰囲気がいいとてもきれいです」

長根さんの構想にはさらに続きがありました。

★照明デザイナー 長根寛さん
「短冊に皆願いを書いてあの笹にぶら下げていくので、そうするとだんだん短冊が増えていって」
「より光を受けてばっと参道が明るくなっていきます」

光と参拝客の願いで風景を創っていく…。
こうして「夏詣」が多くの人に愛される風習となりました。
その手腕は故郷・青森でも。
弘前市の寺専求院から託されたのは、観音堂を誰もが心安らぐ納骨堂へと生まれ変わらせることでした。
光が届かなかった観音堂は、桜色の津軽びいどろのつぼにお骨が眠り、常に光が届く納骨堂に改修されました。

★照明デザイナー 長根寛さん
「観音様に見守られて故人が眠っていけるというすごくいい空間になるんじゃないかな」

★専求院 村井建生 副住職
「私も住職もひじょうに驚きました 安心できるような納骨堂が出来ましてとてもうれしく思っています」

光の温かさを知る長根さんが大切にしていることは…。

★照明デザイナー 長根寛さん
「あくまで人が中心でそこにふさわしい光があるときに『あ、いい光だな』と思いますね」

人の輪を光で作る「夏詣」には長根さんの願いが込められていました。

★照明デザイナー 長根寛さん
「地域の夏詣に参拝していただいて」
「子どもの頃の思い出とか、大人になってから好きな大事な人と一緒に行ったりとか、そういう思い出にしていただければと思っています」

長根さんの作りだす光は、きょうもどこかで誰かの大切な思い出を温かく照らしています。