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冤罪のない社会へ  県内からも「再審法改正」求める声【徳島】(徳島県)



今、再審法改正に向けた機運が高まっています。

きっかけは2024年、元死刑囚の袴田巌さんに「再審」で無罪が言い渡された、いわゆる「袴田事件」でした。

袴田さんは1966年、静岡県のみそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして逮捕起訴され、1980年に死刑が確定しました。

無実を訴える中、再審開始が認められ、逮捕から58年経った2024年の再審で、裁判所は捜査機関の証拠を捏造と認め、無罪判決を言い渡しました。



■「再審法」とは

「再審法」とは読んで字のごとく、やり直し裁判に関する手続きを定めたものなんですが、実は「再審法」という法律はないんです。

一般的に言う「再審法」とは、刑事訴訟法の中の再審に関する規定のことを指します。

しかし、この規定にも様々な問題があります。

■2つの「問題点」

まず第一に、検察側が持つ証拠の開示の手続きや基準について、明確に定めた条文がないこと。

また、裁判所が再審の開始を決定しても、検察側は不服を申し立てることができます。

これを「抗告」というんですが、日弁連などは、この「抗告」の禁止を求めています。

改正に向けては、党を超えた「国会議員連盟」が改正案の国会提出を目指すなど、動きが活発になっていますが、県内からも声が上がっています。

■徳島弁護士会には「特別な思い」

(徳島弁護士会・瀧誠司 弁護士)
「徳島弁護士会では今、再審法の改正を目標としています。」
「間違った有罪判決が確定した後に、一定の要件のもとで裁判をやり直し、冤罪被害者を救済する制度であります」

全国的に再審法改正に向けた機運が高まる中、徳島弁護士会には特別な思いがあります。

■「徳島ラジオ商殺し事件」

(徳島弁護士会・瀧誠司 弁護士)
「徳島県は、徳島ラジオ商殺し事件という有名な事件があります」
「当事者の方が亡くなってから再審が認められた、初めての事件なんですね。」

1953年、徳島市の電機店経営の男性が何者かに殺害される事件がありました。

■一貫して無罪主張も「懲役13年」

殺人の疑いで逮捕された内縁の妻・冨士茂子さんは、一貫して無実を主張。

しかし、裁判で下されたのは、懲役13年の有罪判決でした。

■出所後も「無実」訴えるが・・・

茂子さんは服役し、出所したあとも無実を訴えつづけますが、実に5度にも及んだ「再審請求」も実を結ばず、1979年、茂子さんは殺人犯の汚名を着せられたまま、失意のうちにこの世を去りました。

69歳でした。

■日本初の死後再審で「無罪判決」

(アナウンサー)
「あ、判決が出ました」
「今、無罪判決という判決が出ました」
「冨士茂子さんに、無罪という判決が下されました。」

その後、日本初の死後再審が認められ無罪判決が下されますが、茂子さんが亡くなって6年、逮捕からは実に31年が経過していました。

(徳島弁護士会・瀧誠司 弁護士)
「もっとはやく(再審の)手続きが進行していれば」
「生きているうちに自分の嫌疑が晴らされる、冤罪が晴らされる姿を見ることができた」
「しかし、それができなかったということは、非常に痛ましこと」
「そういったことを徳島の事件で産み出したという徳島県としては、再審法の規定をすみやかに実現すべき」

■当時の「弁護団」に参加した弁護士は・・・

第5次再審請求から弁護団に参加した林 伸豪弁護士です。

当時も、証拠開示の規定のない再審法に苦しめられました。

(ラジオ商殺し事件の弁護団に参加した・林 伸豪 弁護士)
「いろんな意味のある証拠がいっぱいあった」
「それは第4次再審までは全然、裁判官も関心を示さんは、検察官はもとより示さんわ」
「(証拠開示について)再審法の規定がないから」

第5次再審請求で、開示された新証拠は全22冊。

中には、有罪の決め手となった証人の証言を否定しうる、重要な証拠もありました。

■証拠写真

こうした証拠が検察に眠ったまま、それまで4度の再審請求は棄却され続けていたのです。

(ラジオ商殺し事件の弁護団に参加した・林 伸豪 弁護士)
「不利なやつは隠しとった。被告人・被疑者にとって有利、つまり検察にとっては不利な証拠は出さないんですよ」
「関係ある証拠を全部開示しろと言ってるんですよ」
「弁護側、被告人の方に見せてくれと」
「どんな証拠があるのかを」

再審開始決定に対する、検察官の即時抗告については…。

(ラジオ商殺し事件の弁護団に参加した・林 伸豪 弁護士)
「裁判官が見直して、審理をし直す必要があるということを決定したんだから、それを尊重して、再審に移ったらいいんですよ」
「そこでまた、検察はなんぼでも有罪立証できるのだから」
「それなのにご丁寧に抗告することができる、最高裁にもできる」
「そして、(再審開始決定が)ひっくり返される」

(当時の次席検事)
「上級審の判断を仰ぐのが相当であるとの結論に達し、即時抗告を申し立てた」

■ラジオ商でも「即時抗告」

(当時の次席検事)
「上級審の判断を仰ぐのが相当であるとの結論に達し、即時抗告を申し立てた」

茂子さんの再審請求でも1980年、裁判所の再審開始決定に対して検察は即時抗告。

この抗告は高裁で棄却されたものの、再審開始が確定したのは、3年もあとの1983年でした。

(ラジオ商殺し事件の弁護団に参加した・林 伸豪 弁護士)
「3年という期間が空費された」
「あまりにも遅すぎた」
「こんな制度、変えるべきですよ」

茂子さんの無罪判決から7月で40年。

しかし、再審に関する規定は今も変わっていません。

すべての証拠が開示された公平な条件のもと、すみやかに裁判が受けられる、冤罪のない社会を実現するため、国会での議論が待たれます。

(06/13 18:45 四国放送)

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