■「動かぬ証拠をつかめ」 鑑識の仕事に密着【徳島】(徳島県)
みなさんは「鑑識」という、お仕事をご存じでしょうか?
刑事ドラマなどではおなじみですが、あらゆる技法を駆使して、事件事故の現場から証拠を集めるお仕事です。
具体的にどんな技術を使うのか。
その実態にカメラが迫りました。
■いち早く現場へ
日夜発生する、さまざまな事件事故の現場へいち早く駆け付けるのが「鑑識」です。
髪の毛一本、チリ一つ見逃さない緻密な作業。
指紋や足跡など、現場で採取された「鑑識試料」はそれぞれの専門家が鑑定・照合を行い、容疑者特定の決め手となります。
そんな鑑識の仕事に迫りました。
■「指紋」の採取
今回、特別に実際の鑑識作業を見せてもらいました。
まずは、扉についた指紋を採取します。
(記者)
「では、実際に指紋つけてみます」
■専用のハケと粉末で
指紋の採取には、専用のハケと粉末を使います。
この粉末には十数種類ものタイプがあり、現場の状況によって使い分けます。
(徳島県警鑑識課・櫻木 優記 警部補)
「最初に、一方向に粉末を乗せていきます」
(記者)
「コツとかありますか?」
■コツは粉末の量
(徳島県警鑑識課・櫻木 優記 警部補)
「コツは粉末をつけすぎると指紋が潰れる、形がわからなくなる」
「量が少なければ検出ができない、ほどよい量で」
「自分の手を見たらわかるが、溝があって、形もそれぞれ違う」
「自分の指でも、人差し指とか中指・親指と全部形が違う。それで個人の特定をしていく」
■特殊シートで「指紋」転写
(徳島県警鑑識課・櫻木 優記 警部補)
「先ほど検出した指紋を、この特殊な専用の転写シートを使って指紋を出す」
(記者)
「これくらい浮かんでたら、十分指紋は取れる?」
(徳島県警鑑識課・櫻木 優記 警部補)
「そうですね」
「犯人が触ったあと、時間がたっていたとしても」
「私たちは、いろんな道具とか手法を使って検出を試みるので、あらゆる方法で指紋を取る」
■「足跡」の採取
次は足跡。
床に専用のライトを当てていきます。
(徳島県警鑑識課・平井 遥菜 巡査部長)
「土足で入っている場合は靴跡が残っているので、犯人の動きを確認して」
「靴の特徴、どんな靴を履いているか確かめるために、粘着性のシートで採取する」
■粘着性シートを直接
(記者)
「直接貼るんですね?」
(徳島県警鑑識課・平井 遥菜 巡査部長)
「直接貼ります」
「きれいな状態の床面だけではない、土についた足跡もある。畳だったり遮光線では見えないので」
「それによって検出方法も変わる。雨が降ったりだとか条件が変わるので」
「それぞれに合った方法で検出したり採取したりする」
■現場には絶対『試料』が・・・
県警の機動鑑識隊、岡田 吉裕隊長です。
トップとして采配を振るう一方、自ら現場に出向くこともあります。
(徳島県警機動鑑識隊・岡田吉裕 隊長)
「現場には絶対に『試料』が残っている、最後まで諦めることなく」
「指紋なり、足跡なり、現場から採取するということを徹底してもらう」
「警察官として、県民のために仕事をしている。最後まで諦めることなく、事件解決に向けて努力しないといけない」
■2人目の「警察庁指定・広域技能指導官」
特殊な技術を駆使して、証拠を採取するスペシャリストもいます。
鑑識課「写真係」の浪花孝一さんです。
浪花さんのもとには、県内で起きた事件に関する写真や防犯カメラの映像など、年間約1万点もの試料が届きます。
そこから、パソコンで画像を解明化するなどの処理をして、証拠を集めます。
その技術が評価され、5月、「警察庁指定・広域技能指導官」に選ばれました。
徳島県警では2人目の快挙です。
(徳島県警鑑識課写真係・浪花孝一 係長)
「防犯カメラに映った画像から、情報を取り出すのが画像解析という」
「(警察庁指定・広域技能指導官に選ばれたのは)画像解析で評価をいただいたと思う」
浪花さんにとって、忘れられない事件があります。
2016年、県内で起きた性犯罪事件です。
(徳島県警鑑識課写真係・浪花孝一 係長)
「被害者の瞳に犯人が映ったという事件は、印象に残っている」
容疑者のスマートフォンに残された、被害者の写真。
浪花さんは、被害者の瞳に映った画像を解析して、背景の建物などを割り出し、犯行を裏付けする証拠となりました。
■被害者の「瞳」に証拠が?
今回は豊成アナウンサーの瞳に映った、記者の顔や背景などの情報を、浪花さんに解析してもらいました。
(徳島県警鑑識写真係・浪花孝一 係長)
「今回は、目がポイントなので」
まず、ポイントとなる目の画像を切り出します。
瞳に映る情報をより鮮明にするために、明るさとコントラストを調整します。
この作業を繰り返し、背景を浮かび上がらせます。
■試行錯誤の調整
(徳島県警鑑識課写真係・浪花孝一 係長)
「暗い所が明るくなって見えやすくなったり、コントラストを上げたら画像がはっきりする」
「実際の画像は、これよりはるかに悪い場合は多いので、明るくしても画像が浮かばない(調整は)難しいですね」
試行錯誤の結果…。
(徳島県警鑑識課写真係・浪花孝一 係長)
「これで完成です」
■眼球の中に見えた!
記者の顔が、はっきりと浮かび上がりました。
背景のビルや車も確認できます。
浪花さんはこれまで長年にわたり、こうした地道な作業を繰り返し、事件解決につながる証拠を見つけてきました。
その熱意の裏には、仲間たちへのこんな思いがあります。
■刑事ドラマで「おなじみ」だけど・・・
(徳島県警鑑識課写真係・浪花孝一 係長)
「捜査員の熱意かなと思う。捜査員は被害者と直に接する」
「被害者に対して、どうにかしたいと強い思いをもって捜査する」
「私自身は被害者と直接会わないが、捜査員の熱意に負けないようにやりたいと思う」
(徳島県警鑑識課・竹尾憲次 課長)
「誇らしいですね。徳島からなかなか広域技能指導はなれないと思う」
「警察庁で認められたということは、これまでの実績が評価されたと思う」
「真面目であって芯を持っている、最高の鑑定官ではないかと思う」
(徳島県警鑑識課写真係・浪花孝一 係長)
「広域技能指導官という立場になったので、名前に恥じないように頑張りたいと思う」
ドラマとは違い、地味で根気のいる鑑識という仕事。
けれど決して諦めない眼差しの先に、事件の決定的な証拠がきっと見つかるはずです。
(06/12 18:15 四国放送)
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