■どう向き合う?南海トラフ巨大地震の「新被害想定」 中野名誉教授に聞く【徳島】(徳島県)
国は、南海トラフ巨大地震の被害想定について、11年ぶりに全面的に見直し、2025年3月に公表しました。
今回の見直しについて、地域防災に詳しい徳島大学の中野晋名誉教授に話を聞きました。
(後藤田 知事)
「今回の想定が変わったということは」
「一つのまたやらばければならない基準が、また一段階上がったと」
3月31日、国から発表された、南海トラフ巨大地震の被害想定。
11年ぶりの発表となった今回、県内の死者数は最大4万1千人で、2014年に国がまとめた想定から1万人増加したほか、深さ1センチ以上の浸水面積に関しては、前回想定の1.26倍にあたる、148.6キロ平方メートルが想定されています。
今回の公表を受けて、地域防災に詳しい徳島大学の中野晋名誉教授は。
(徳島大学・中野晋 名誉教授)
「前回は健常者も要支援者も、同じ速度で避難できると想定していたが」
「要支援者の避難速度が、約6割に減じられた」
「津波に対する避難速度を、より精緻化したために」
「要支援者が避難するのが遅いことを考慮した結果」
「沿岸部に住んでいる、要支援者の犠牲者が増えたのだろう」
また、浸水面積に関しては2012年に県が発表した被害想定と比較し、次のように述べました。
(徳島大学・中野晋 名誉教授)
「徳島県が平成24年(2012年)に発表した想定浸水エリアと比べると」
「今回の浸水エリアの方が比較的狭かった」
「心配し過ぎないように」
今回、新たに想定されたのが、災害関連死。
地震や津波の直接的な原因によるものではなく、災害で負ったケガや避難生活での心身の負担など、間接的な原因で亡くなるケースを言います。
(徳島大学・中野晋 名誉教授)
「徳島県内では『想定される災害関連死が』1200人から最大2400人ぐらい」
「災害関連死としては、避難所での劣悪な生活が大きな要因になる」
「避難所で暮らさないといけない人を、いかに減らすかというのが大事」
県内では13万6000棟の建物が全壊または焼失し、地震発生から1週間後の避難者数は、最大46万2000人に上ると想定されています。
中野教授は、県民の避難先や避難時の環境について危機感を示します。
(徳島大学・中野晋 名誉教授)
「想定されている避難者数が非常にたくさん」
「想定される避難者に対して『避難所』に避難者全員を収容できるか」
「避難所の容量を考えると、まだまだ『避難所』が不足している」
「避難所の多くは、公共施設、学校や公民館が避難所になる」
「避難しても生活できるような、例えば学校の体育館にエアコンがないとか」
「そんな問題もまだまだ遅れている」
「天井や壁材が多数落ちるようなケースが、能登半島地震でもたくさん実際起こっている」
「どのくらいの数の避難所が使えるのかが心配」
「自治体ではそれなりに準備して、十分に受け入れられると」
「実際に細かく調べてみると、震度6強や震度7の揺れが発生すると」
「使えなくなる避難所も発生すると思う」
「そういった点検もぜひやって欲しい」
近い将来、発生が予想される南海トラフ巨大地震。
発生に備えて、各自治体に求められることは。
(徳島大学・中野晋 名誉教授)
「容量を増やすことと、施設を使いやすく」
「そこで暮らしても、暮らせるような環境になるように」
「設備を整えていく必要がある」
「支援の必要な人に対して、どうやって避難したらいいのかを」
「あらかじめ計画しておく」
また、県民に対しては、行政に頼りすぎないよう、自分たちで災害に備えて欲しいと訴えます。
(徳島大学・中野晋 名誉教授)
「災害が起これば『自助共助』が一番重要」
「自分たちだけで災害を乗り越えていかないといけない、という思いを持って」
「事前準備をしていただきたい」
中野教授は「強く反応し過ぎることはない」としつつも「発生に向けて各方面で警戒意識を高めていく必要がある」ともコメントしています。
(04/24 18:45 四国放送)
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