■【挑戦】東京から移住し紫波町図書館の新館長に 「館長」と「絵はんこ作家」の二刀流で本と町と人をつなぐ(岩手県)
今月のシリーズ「挑戦」です。最終回は紫波町図書館の館長を去年から務める女性を紹介します。まだ見ぬ本との出会いを求めて二刀流で挑戦を続けています。
午前10時。来館者を出迎えるのは、去年10月、館長に就任した天野咲耶さんです。天野さんが勤めているのは、2012年にオープンした紫波町図書館。「こどもトイレ」や「授乳室」もあり、子育て世代でも利用しやすい環境が整っています。音楽が流れる館内は、まるで 喫茶店のような居心地の良さが感じられます。
天野さんが紫波町図書館を初めて訪れたのは、4年前のことでした。
天野咲耶さん
「最初、なんかとにかく明るい図書館だなと思って。天井も広くて開放感がありますし、何よりスタッフさんが笑顔でにこやかに対応くださったので。すごく自分の好きな本が目立つところにあったりすると、私を迎えてくれているのかなって、すごく感じのいい図書館だなと思いました」
天野さんにとって"本"は、特別な存在です。
天野咲耶さん
「ちょっと迷っている時とか困った時、歩き回って棚を見ているだけで、なんとなく自分の気持ちを表す本に出合えるような気がするので、本ってそういう悩み事を聞いてくれるような存在かなと思います」
東京都出身の天野さんは、友人の誘いで「地域おこし協力隊」として紫波町に移住。協力隊の仕事として、図書館の広報などを担当していたおととし、前の館長から 「次の館長に」と、指名されました。
天野咲耶さん
「前館長からは、30代の感性を活かしてほしいという所と、紫波町図書館を楽しんでくれる人がいいなという風に思っていたみたいで、すごく楽しい紫波町図書館の雰囲気を保ってくれるんじゃないかという事で、私を指名して頂いたようでした」
野さんには「館長」のほかに、もう一つの"顔"があります。
東京で 2011年から活動を続けていた消しゴムにカッターや彫刻刀で絵を彫る「絵はんこ作家」としての"顔"です。
天野咲耶さん
「社会人になった頃に、結構会社が大変仕事が大変だったのがあって、息抜きに始めたっていう感じで、徐々に自分で文章も書いて発表する事になった時に、その挿絵として自分のはんこも使って表現するようになりました。手彫りなので、直線じゃない、フワッとした線のなんとなく…リラックスできるような、うれしい柔らかさなのかなっている風に思いますね」
「新館長」になるのは、難しいと考えていました。
天野咲耶さん
「責任がありますし、これまで楽しく利用者としても使っていた図書館を、館長としてとなると目線が変わってしまうので、そこの不安は一番大きかったですね。利用者さんが、自由に図書館を使ってもらうっていういろんな使い方について、私もイメージしやすいかなと思っていて、自分にできることは、あるかもしれないなっていうふうに決めたっていうのが大きいですね」
図書館のオープンから、歴代の館長と仕事をしてきた手塚さんは、天野さんのある変化に気づきました。
手塚さん
「多分、戸惑いもあるかとは思うんですけど、おそらく背負うものが全然変わってきてしまったと思うので、この図書館をどうしたらいいのかっていうふうに、視点を変えられたのかなと。とてもあの、組織の事を考えてくださる、前からそうだとは思うんですけど、そのように変わられたんじゃないかと個人的には思います」
紫波町「日詰商店街」。この商店街を舞台にしたあるイベントを、天野さんは「地域おこし協力隊」時代に企画しました。同じく「協力隊」として紫波町に移住してきた南條さんも 参加したイベント、「本と商店街」です。
南條さん
「去年、すごうたくさんの人に来ていただいて本当に泣きました、感動しすぎて。いつかは私が見たい日詰商店街の未来、これが日常になったらいいなっていう風景を去年見れて、すごくうれしかったです」
「本と商店街」は、全国から個性的な書店や出版社、飲食店が集うブックマーケット。今年で3回目となるイベントへの協力を、地元の商店に依頼します。
商店街で80年。原さんは、天野さんに新しい"風"を 感じています。
原さん
「町の人とサラッと溶け込むっていうか。そんな彼女だからきっと、『本と商店街』とかっていうようなつながりのイメージも作れたんじゃないかなって」
天野咲耶さん
「商店街で偶然出合った本から何かがこう変わるっていう事があるので、やっぱり町の人と本をつなぐっていうのは図書館もですし、図書館じゃないところ、地域に出てもやっぱりそういう本との接点っていうのはたくさんあるといいなと私が思っているので、それは続けていきたいなと思います」
図書館の「館長」と、「絵はんこ作家」の二刀流で天野さんは、まだ見ぬ"本"との出合いの場を 広げてゆきます。
(04/24 18:40 テレビ岩手)
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