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【密着】「挑戦の先には豊かな人生がある」難病を抱える女性 踏み出した社会人としての第一歩(熊本県)



これまで密着取材してきた全身の筋力を次第に失う難病を抱える熊本市の女性が、この春大学を卒業し、社会人としての新生活をスタートさせました。

4月、熊本市の「くまもと障害者労働センター・おれんじ村」の入社式。この春仲間入りしたのは山本栞奈さん(27)です。栞奈さんは全身の筋力を次第に失う難病を抱えています。

家族がいない栞奈さんは、5歳から18歳まで児童養護施設で過ごしました。
■山本栞奈さん
「いくつになっても親はいいもの。親のありがたみを感じてみたかった」

栞奈さんは高校卒業後、自衛隊に入隊しましたが、体に異変を感じ2年で除隊。その後、難病にかかっていることがわかりました。病気が悪化する中、栞奈さんは、難病がありながら社会福祉士として活躍する女性と出会いました。

当事者でありながら、相手に寄り添い働く姿にあこがれた栞奈さんは、自分も同じ道に進みたいと大学に入学。学生ボランティアに協力してもらいながら夜間の授業に通い、訪問看護師やヘルパーの助けを借りながら、夢だった1人暮らしを始めました。


そんな栞奈さんですが、今年1月に取材した時には…。
■山本栞奈さん
「最近すごく寝不足が続いていて、夜中とかに目が覚めて、きょう覚えたやつは何だっけ?みたいな感じで」

年末から体調を崩し入退院を繰り返していた栞奈さん。社会福祉士の国家試験に向け猛勉強を続けていました。自由に動かせるのは首から上と右手の一部だけ。紙のテキストはめくるのが難しいため、教材はYouTube を使います。

■山本栞奈さん
「大学でやっぱり友達がなかなか作れなかった。みんな頑張ろうって、画面だけの世界ですけど、そうやって励まし合いながらすごいなって刺激をもらってます」

2月の試験当日。身体が不自由な受験者は、代筆解答や試験時間の延長などが配慮されます。試験を終えた栞奈さんは。
■山本栞奈さん
「ほっとした気持ちと、なんだろう…実力を出せなかったっていう…落ち込んでます…」

3月。大学卒業の日。栞奈さんの晴れの日をサポートするのは、親を頼れない若者を支援する認定NPO法人の山下祈恵さんです。
■認定NPO法人トナリビト 山下祈恵さん
「メイクすると、ぐっと大人っぽく見える」

出会って5年あまり。困ったときはいつも手を差し伸べてくれました。

■認定NPO法人トナリビト 山下祈恵さん
「いや、よくやったよね。シンプルにおめでとうしかないかな」

卒業という晴れの日。でも、栞奈さんには複雑な思いがありました。
■山本栞奈さん
「ちょっと(国家)試験を失敗しちゃったから、みんなに会うのに引け目を感じたりとか、正直大学であんまり友達が出来なかったっていうところで、ちょっと…なんだろうな…惨めな思いしたくないなって」


体調がすぐれないのもあり、式への参加はやめました。それでも、人生の大切な節目を写真に残したいと考えていました。
■山本栞奈さん
「こうやって門出をみんなで朝早くから祝ってもらえることとか、本当にありがたいなって思う」

そして栞奈さんが向かったのは、卒業式の会場です。そこで会ったのは園川七望さん。授業をサポートしてくれた友人です。
(園川七望さん)
「来ないって聞いてたから、むっちゃうれしかった」
(栞奈さん)
「来ないって言ってたけどもう帰る」
(園川七望さん)
「本当ですか(笑)」

■園川七望さん
「何でも前向きに頑張っていて、すごいなって。私も元気をもらえる存在でした」

■山本栞奈さん
「学校生活をずっと支えてくれた友達が、一緒に写真撮ろうって言ってくれて、あぁ来て良かったなって思いました」

大学生活が一人ではなかったことに気付きました。

■山本栞奈さん
「これまで頑張ることから避けてた自分が、こうやってまだ挑戦できるんだなって。そこが大きく心が変化したところ」

栞奈さんが働く事業所では、カフェの運営や手作りのお菓子の販売などをしています。栞奈さんの仕事は週5日。主な仕事は。
■山本栞奈さん
「ちょっと斜めから。いや、反対側からがいいかな」

SNSを使った商品のPRです。
(ヘルパー)
「文章悩むね」
(栞奈さん)
「悩みます。自分が食べないから、人に聞くしかない。人それぞれ意見が違い過ぎて」
(ヘルパー)
「確かにね」

悩んだ末、SNSに投稿した文章は「空は暗いけど気持ちは晴れ!!今日も手作りハンバーグを召し上がれ!」。仕事の時も医療的ケアが欠かせない栞奈さん。1日4回の投稿は、納得いくまで何度もやり直します。

■山本栞奈さん
「1人でも多く見てもらうためにはみたいな。自分が満足できるようにやりたいなって」

栞奈さんは今後、講演活動なども担当する予定です。そして…。


■山本栞奈さん
「普通に暮らしていくだけでなく、プラスアルファ、自分の趣味など豊かな生活が送れることを目標とします」

「挑戦の先にはきっと豊かな人生がある」。そう信じて、栞奈さんは新しい世界に飛び込みます。

(04/28 19:48 熊本県民テレビ)

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