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「酒気帯びで70キロ以上でバック走行」死亡事故から1年…危険運転を考える(熊本県)



去年6月15日、飲酒運転の車によって27歳の女性が命を奪われました。事件から1年、全国で繰り返される「危険運転」について考えます。

熊本市中央区細工町の歩道に供えられた花。15日にある女性の命日を迎えました。それが…猛スピードで後ろ向きに走る車。飲酒運転の末に女性の命を奪いました。あれから1年。事件がもたらしたものを考えます。


運転していたのは、松本岳被告(24)。酒気帯び運転で歩行者をはねた過失運転致死などの疑いで現行犯逮捕されました。はねられた熊本市児童相談所の職員横田千尋さん(当時27)は、その場で死亡が確認されました。


その後、より刑が重い危険運転致死傷の罪で起訴された松本被告。熊本地裁は、時速70から74キロのバック走行を危険運転と認め、懲役12年の判決を言い渡しました。


事件から1年を迎えた15日、現場には横田さんを知る人たちが訪れました。

■同じ職場の人
「すごく明るい方でいろんな人が横田さんの元にやってくるようなみんなの中心にいるような人で仕事もとてもできる方で…ご遺族の方のことを思うと胸が痛い」

■大学の友人
「いつも会えていたのが急に会えなくなると辛い。彼女の分まで頑張って生きようかなと思います」

一方で…裁判で「時速70キロでは危険運転にあたらない」と主張した松本被告が6月、判決を不服として控訴。裁判が続くことになりました。交通事故の遺族の会で代理人を務める橋正人弁護士は、バック走行を危険運転と認めた判決を評価しています。

■犯罪被害者支援弁護士フォーラム 橋正人事務局長弁護士
「進行を制御することは、やはりバックでは70キロの場合はね、無理でしょっていうのは常識的な解釈だと思いますよ。だから裁判所の判断は実に正しい判断をしているわけで」

橋弁護士はこのように述べ、控訴は棄却されるべきと訴えました。



【スタジオ】
(緒方太郎キャスター)
危険運転罪の条文には「アルコールまたは薬物の影響で正常な運転が困難な状態や、進行を制御することが困難な高速度で車を運転した場合」と定められています。実際に、飲酒や猛スピードの運転でも危険運転が認められないケースが全国で相次いでいます。

【VTR】
橋弁護士と交通事故の遺族は今年3月、国に危険運転が適用される速度やアルコール濃度の数値基準を設けるよう求めました。

■橋正人事務局長弁護士
「問題となっているのはアルコールの影響の場合と進行制御困難な高速度の場合。この2つはどのように条文を変えていくかということが検討されてますよね。いまの条文は生かすんです。いまの条文+数値基準を設ける」

一方、時速が1キロ足りないだけで危険運転と認めないことがないよう、基準を満たさなくても悪質な運転には適用することを提言しています。


【スタジオ】
(緒方太郎キャスター)
熊本のケースは、バック走行で危険運転を認める前例の少ない判決で、福岡高裁がどのような判断をするのか注目されます。


(永島由菜キャスター)
一方で、亡くなった横田さんの父親は裁判で「わずか27年でこの世を去った大きすぎる喪失感、悲しさ、虚しさで毎日が地獄です」と述べました。

(緒方太郎キャスター)
この一言に、無念さと怒りが凝縮されています。酒を飲んでハンドルを握る行為がいかに愚かなことか。どうか自分事として捉えてほしいと願っています。



(06/16 19:52 熊本県民テレビ)

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