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「傲慢だ」賛否渦巻いた行動…赤ちゃん抱いて議場へ入ったママ議員の今 #私のメッセージ(熊本県)



世界経済フォーラムが11日に発表した、148か国を対象に男女格差を数値化した「ジェンダーギャップ指数」。日本は前回と変わらず118位でした。特に政治分野での男女格差が広がったと指摘されている中、2017年、日本社会に一石を投じた「ママ議員だった女性」の今を見つめました。


熊本市に住む緒方夕佳さん(49)は、2人の小学生を育てる母親です。
■緒方夕佳さん
「今は一般的なお母さんですかね。一般的かはわからないんですけど、子どものごはん作ったりとか、 子どもの習い事でバタバタしたりしています」

2人目の子ども、道玄くん(8)がお腹にいた頃緒方さんは、熊本市議会の議員でした。出産後、初めて復帰した2017年11月の市議会初日。緒方さんは議場で、当時8か月の我が子を胸に抱きました。その時の行動を振り返ります。

■緒方夕佳さん
「これから赤ちゃんを産むかもしれない、子育てするかもしれない人が議員になるためには、赤ちゃんを必要な時に抱っこできたり、授乳できたりという環境が絶対に必要ですので、そういう前例を作りたかったんですね」

■緒方太郎キャスター
「ほかの議員の反応や議場の空気感は、今でも思い出せますか?」

■緒方夕佳さん
「まさか、議場を退出してくださいと言われるとは思っていなかったです」


(2017年11月・熊本市議会)
乳児を抱いて議場に入った市議会議員は初めて。国内でも例がなかった行動に…。
■議員
「泣いたらどがんする。泣いたら」

一部の議員からヤジが飛びます。結果、赤ちゃんは退出を促され、緒方さんは、議会開始が40分遅れたとして、議長から厳重注意を受けました。


「赤ちゃんを抱いたママ議員」の行動は、全国から反響を呼びました。当時、緒方さんに届いた手紙やメール、電話は1000件を超えました。緒方さんを励ます声がある一方、「これだから女は」、「傲慢だ」などと心ない声も届きました。

■緒方夕佳さん
「単なる嫌がらせも多かったんですよね。こちらが費用を払わないといけないような商品の送り付けも何件かありました。政治活動・議員活動と子育ての両立を可能にするような施策が、こんなにないんだということを 知っていただけたので、それが一番大きい効果だったのではと思います」

その後、市議会の会議の規則には、今までなかった産休の期間が記されました。確かな変化はありましたが、緒方さんは、2023年の統一地方選に立候補せず、2期務めた熊本市議会を去りました。

体が限界を迎えていたのです。

■緒方夕佳さん
「2期目に第2子を妊娠・出産したんですけど、(当時は)産休の制度などが整っていない中でだいぶ無理をしてしまったんですね。貧血だったり、産後しばらく思うように歩けなかったりしました。そのまま続けるともっと重大な体の不調になりそうだと思ったので、不出馬を決めました」

議会を去った元・ママ議員は、今は主婦として、慌ただしい日々を過ごします。

勇気を振り絞った行動から8年。それでも、日本の男女格差は世界と大きく水をあけられています。緒方さんが今を生きる人へ伝えたいメッセージとは。

■緒方夕佳さん
「曲がりなりにも民主主義の国なので、伝える、表現する。『私はこう思っています』、『こういう風にしてほしい』と伝えることで、社会が動くきっかけになります。実はみんな同じこと思っているかもしれないから、 勇気を出して言ってみましょうよって思いますね」

(06/13 21:49 熊本県民テレビ)

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